しばらく前から飲む約束をしていたので、飲み会の誘いだと思い込んだ。
「おれ、五月に転職する。」
昨夜、電話口からあいつらしくないこわばった声が聞こえてきた。
仕事はできる。
営業からプログラミングまで器用にこなせる。
お客のふところに飛び込むのがうまかった。
でも組織のなかでは不器用だった。
正義感が強すぎて、上司でも先輩でもかまわず、ひととよく衝突していた。
仲裁することも多かった。
わたしは十年、彼は十五年、それぞれ勤めた会社を去る。
彼にとってはじめての転職。
新しい職場になじめるか心配ではあるが、請われていくからいいだろう。
昔から義理堅く、お世話になったかたの会社を手伝うという。
「お前と一緒で、このままだと器用貧乏になるかと思ってさあ。」
そういうことを言うところが不器用なのだ。
「しかもお互い評価されないしなあ(笑)」
ちょっと待て。おれを一緒にするな。
いつの間にか、いつもの豪快な笑い声になっていた。
とにかく不器用な友人が人生の転機に挑む。
転職の先輩としてアドバイスせねばなるまい。
スガシカオは言っている。
転職って、広告が言うほどカンタンじゃない。あ、言われてしまった。
(マイナビ転職から)
と、とにかく祝杯だ!